2010年10月14日木曜日

世代別選挙区は逆に世代間抗争を生まないか? | サンデル教授に問いたい「搾取」の正当性:日経ビジネスオンライン

「世代会計」という言葉を初めて知った。
世代会計とは、「国民が生涯を通じて、政府に対してどれだけの負担をし、政府からどれだけの受益を得るか」を推計する手法とのこと。

そして世代会計で算出してみると、60歳以上の世代の純負担はマイナスで約4000万円の得(受益超過)、50歳代は約990万円の得(受益超過)。それに対して、それ以降の世代の純負担はプラスで、将来世代は約8300万円もの損(支払超過)となっているらしい。

では、この世代間格差はあってもよいのか、正当性の根拠は何かと著者は続けている。

サンデル教授に問いたい「搾取」の正当性:日経ビジネスオンライン
世代間格差については、「今の老齢世代は戦争を経験しており、そのような金銭面で評価できない苦しみを受けた。それも勘案する必要がある」といった反論が聞かれる。この意見は一見もっともらしく聞こえるが、少なくとも、受益超過にある今の50歳代にこの前提は当てはまらない。

(中略)

この打開の方策の一つとして、東京大学の井堀利宏教授は、「世代別選挙区」の導入を提唱している。例えば、地域別に分かれている選挙区でなく、20代代表、30代代表、…、60代代表というように、世代別の代表を国会に送り込む方法である。


世代別選挙区はユニークなアイデアだが、20歳代表はこう思う、60歳代表はそれには反対だ、という議論をしていたら、ますます世代間の溝を広げ、「抗争」のようなエスカレーションを生むのではないか。

世代間格差は、公平性の面から、できるだけ解消されるべきだと私も考える。

でも世代別選挙区には反対だ。〇〇世代代表という区分を国民の中に作り出すのではなく、国民は一丸となるべきだ。


日本の喫緊の社会保障の問題こそ、国会で党議拘束を超えて、議論をして欲しい。

世代会計の数字を元に、世代ごとにアンバランスな状態にあることをどう解消していくか、各地域から選ばれた国会議員が大いに議論し、新しいモデルを作っていくべきだろう。
勿論、国会だけでなく、自分も含めてひとりひとりの国民も考えていくべきだろう。

現状のサービス内容を維持するために将来世代の負担がかかりすぎるのであれば、サービス内容を下げて、今いきている世代の負担額を増やしていくしかない。

自分だけのことを考えたら1円でも貰えるものはもらいたい。でも、みんながそんな私心を前面に出してしまったら、社会保障の問題は解決しない。

しかし、日本人のスピリットには、世代関係なく、公を考えるスピリットが生きていると、私は信じている。だから、世代別の代表を出して議論を戦わせずとも、問題は解決できると思っている。


ただし、選挙権は18歳から与えよう。

世代別ギャップを埋めるために、年齢が若い国民も選挙権を持とうということではない。

今年の5月に、国民投票法が施行されたが、国民投票の投票権は年齢満18歳以上の日本国民が有すると規定されている。
総務省|国民投票制度

ところが、年齢満18歳以上満20歳未満の者が国政選挙に参加できるようになるまでは、今と同じく、投票権は年齢満20歳以上の者に限られている。

つまり、国民投票法の規定と公職選挙法の規定の間にギャップがあり、それを解消しましょうと決められているのに、まだやれていない。

だから、早く18歳以上から国政でも国民投票でも投票できるように環境を整えよう。

やるべきことをとっととやろう。

4 件のコメント :

  1. 世代間格差の是正のために世代別選挙区制で世代別の代表を選出しようというのはわからない話でもないですが・・・

    そもそも、60代だから60代の主張だけをする、20代だから20代の主張だけをする・・・なんてのが国会議員と呼べるのかは大いに疑問です。

    国会議員というのは「世代間」という単位でなく「国」という単位で物事を考えられる人でなければ困る思うのです。

    世代間格差がどうこうの前に、まずはその問題の根源である国民年金や国民健康保険などというシステムそのものが、本当に100年200年の単位で持続可能な制度なのかどうかを真剣に議論するべきではないでしょうか。

    結局、世代間格差の問題は制度設計の誤算にあると思うからです。

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  2. 世代間格差の問題は反感を買いたくない(選挙戦略上不利)ので負担を先送りにすることを続けた結果です

    少子化で若年者世代が減り続ける今、選挙戦略で考えると高齢者向けのばらまきしか発生しないのは自明の理です

    それに対して若年者の選挙への無関心さに全責任を押し付けることは簡単ですが、制度として先送りすることが選挙上不利になる制度を確立するのは意味があることではないでしょうか

    制度設計が悪い悪いと言うのは誰にでもできますが、代案のない否定は何も生み出しません

    そういった意味では世代別選挙区制にはある程度の効果があるものと思います

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  3. 匿名さんがおっしゃるように、国会議員が選挙の票を集めるために問題を先送りしてきたのだとすれば、それは非常に問題だと思います。

    しかし、だからと言って世代別選挙区制を導入すれば、今度は票を集めるために同世代の主張ばかりをする国会議員が増えるのではないでしょうか。そのような状況では世代間がギスギスするばかりで、やはり問題の解決ができるとは思えないのです。

    そこで、ある程度の基礎年金を税金で手当てすると同時に、高齢者でも働けるような環境を政治で作るというのはどうでしょうか。特に若者を支援するような事業、例えば保育所とか。

    日本では定年という制度というか慣例があり、能力のあるなしに関わらずある歳になると働きたくても働けなくなるので収入が途絶えます。だから働かなくても生活できるほどの多額の年金が必要になるのだろうと思うのです。

    一方、私の親は「おまえらの世話にはならん!」といっています。つまり、働けなくなるまでできるだけ自立した生活を送りたいと思っているのでしょう。とはいえ、収入は必要です。

    ならば、働けるようにすればいいのでは。今時の「高齢者」は元気です。十分働ける方もいらっしゃると思うのです。そういった方は引き続き社会に参画していただき、誇りと生きがい、そして収入を得ていただいてはどうかと。

    しかし、私の祖父は90歳で病気を患い、とても働ける状況にありません。こういった方々をどう社会で支えていくのかというのは、さらに考えなければならないと思いますが。

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  4. 世代間対立が発生することに問題があるのでしょうか
    利害関係者が利害代表者を出し、公の場で話し合いをすることで利害調整をするというのはとても健全な形だと思えるのですが。

    現状、世代間格差があるにも関わらず数の論理で少数である将来世代に負担を押し付け続けている現状を解決する手段として、世代別選挙区制というのは若年者世代向けのアファーマティブ・アクションという面もあるのではないでしょうか。

    現在の年金制度改革と呼ばれているものを例にあげると
    ・将来世代に対する給付の削減
    ・将来世代に対する給付開始年齢の引き上げ
    ・将来世代に対する負担率の上昇
    ・老年世代に対する物価スライド給付削減の停止

    結局の所、全体で負担するというよりは現在の給付対象者である老年世代への優遇でしかない政策と見受けられます。

    既存の力関係で政治が動いた所で、将来世代への負担を増やすだけの政策しか実施されません。
    若年者の政治(投票)への関心の低下はこういったところにも原因があるのではないでしょうか。
    そういう意味で抜本的に将来世代の意見を吸い上げる世代別選挙区というのは有効であると考えます。

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